看板のような大きさのライン工程表を抱えて、工場を歩き回っているのは、室津工場でライン管理を担当している溝口さん。製品の納期や材料の在庫管理を徹底することで、工場でスムーズに生産活動が出来るような仕組みづくりに注力しているそう。時々ミシンの前に立ち止まって、スタッフさんに笑顔で声をかけている優しげな姿が印象的。かつては、日本企業の縫製工場アジア海外拠点で、管理監督として長年経験を積んできたベテランです。
「海外の工場などでは、マニュアル化することでなるべく流れをシンプルに機械化していくという流れが一般的ですが、この室津工場は、20年を超える熟練の技術をもった職人さんもおられ、ほぼ全ての工程に人の手が関わっています。日本の手仕事文化が引き継がれていると感じます。」

本来平面である皮素材で、ランドセルという立体を形作るのは、機械だけでは難しい作業。微妙なズレなどの修正は、ひとつひとつ人間の手を介さなければ完成できないのだそう。

働く人が活き活きした現場を目指して

チームの生産性をあげるために、溝口さんは職場でのコミュニケーションを大事にしています。日々心掛けていることは、自分自身がいつでも元気でいること、大きな声で挨拶を交わすこと。これは国境関係なく、万国共通で大切なことだと考えています。

「いい製品は、元気な職場から生まれます。生産に携わるスタッフみんなで目標を共有することで、苦楽を共にして、お互いフォローし合える強い関係を築いていきたいです。結局は、人が作るものですから。活力が溢れる環境にしていくことで、スタッフのモチベーションも上がります。その結果として、良い製品が生まれて、商品を手に取ってくださったお客さまにも、その良さが自然と伝わると思うんです。」

納期や品質を維持するために、機械化することだけが答えではない。溝口さんの言葉からそんな強い気持ちが伝わってきます。

お父さんが背負ったランドセルを、子供たちに

現在、地元の小学校に通っている二人の子どもさんには、”お父さんの作ったランドセルが欲しい”と言われることもあるとか。なんと、溝口さんが生まれ育ったのも、室津工場の近く。ご自身がランドセルを背負っていた頃の記憶が残る愛着のある地元で、ランドセル作りに携わっていることに、縁を感じることも多いそうです。

「実際にランドセル作りの現場に立って感心することは、職人さんたちの目利きの力です。良いもの悪いものを見分ける基準が高く、ランドセルの背負いやすさやフィット感へのこだわりを感じますね。これなら安心して自分の子ども達にも背負わせてやれると信頼がおけます。もし出来ることなら、自分が携わって作ったランドセルを子どもに渡してやりたいぐらいですけどね(笑)」 安心とこだわりのランドセルを全国に届けるべく、今日も溝口さんは明るい笑顔で工場を盛り立てています。