真剣なまなざしで作業しているのは、勤務歴27年を迎えるという三木八千代さん。もともと同じ工場に務めていたお姑さんに誘われたことが入社のきっかけだったそう。昔からセイバンのランドセルが好きなんですと、朗らかな口調で話してくださいました。

「勤め始めた頃は年上ばかりでしたが、いつの間にか年下が増えました。工場内は、年齢を超えて、コミュニケーションを取れる環境でみんな仲よしですよ。けれど作業中はしっかり集中。お互いチェックし合ってミスが出ないように、一つひとつ丁寧な仕事を心掛けています。一つのミスが全体の工程に関わってくるので、もれのないように。セイバンのランドセルがちょっとしたことでは壊れない丈夫さも、これらの連動した繊細な手作業から生まれているんです。」

孫にプレゼントする、想いのこもったランドセル

八千代さんには、6人の孫をもつおばあちゃんという一面も。お孫さまが小学校入学の度に、これまで全員にセイバンのランドセルをプレゼントしています。これは八千代さんの喜びでもあり、誇りでもあります。

「孫たちに手渡すと嬉しそうに箱を開けてくれます。それぞれが選ぶランドセルのデザインも個性豊かで、時代時代のデザインの移り変わりも感じます。いつの日か、”そういえば昔、おばあちゃんがこんなことをしてくれたな”と、頭の片隅に残ってくれていたら嬉しいですね。そしてもう一つ、私が孫たちに伝えたいのは、作る人の想いです。孫の一人が、学校から帰って来てそのままランドセルを玄関に放り投げていることがあって、『職人さんがみんなで一生懸命作っているものを、そんなに粗末に扱ってはいけん。ばあばの言ってることがわかる?』と強めに注意したこともあります。少しはわかってくれたのか、それからは部屋に持ってあがるようになりました。小学校の授業の一環で、孫たちが工場見学に来てくれる機会があったときは嬉しかったですね。『ばあば、ここでみんなと一緒に作ってるんだよ。』と孫に話したら、『ふうん』と照れくさそうでしたが(笑)。一つのカバンができあがるまでに、これだけ多くの人の手が関わっていることを知って、ものを大切にする気持ちが孫たちに育ってくれたらよいですね。」

お孫さまの話をしながら目を細める三木さん。今年は、ひ孫が生まれる予定。6年後、どんなランドセルを買ってあげるか、これから待ち遠しいそう。優しいおばあちゃんの姿が目に浮かびます。

自分で背負ってみることから、成長していく

仕事に対しては、真摯な姿勢の八千代さん。毎年シーズンになると、百貨店のランドセルコーナーに足を運び、自分の携わった箇所をチェックします。そしてランドセルを選びに来ているおじいさま、おばあさまとお孫さまの姿を見て、自分と重ねて嬉しくなるのだそう。また最近、新しい工程ラインに移動になってからは、より一層活き活きしています。
「新しく覚えることがいくつになってもある、この仕事が好きです。27年ランドセルを作ってきましたが、学ぶことがまだたくさんあります。私は若い方に、あまり口で細かく教えることはありません。まずは自分でランドセルを背負ってみて、自ら体験することが大切。自分で気付いて改善することで、少しずつ成長していくものだと思うからです。すべては経験の積み重ね。私もまだまだ勉強中です。」

柔らかい笑顔の奥に垣間見える、仕事に対する謙虚さと職人魂。27年前から変わらぬランドセルへの愛情を抱えて、今日も“日本中の孫”のためにランドセルを作っています。